結婚ビザ申請では、「日本人配偶者の方の戸籍謄本」と「お相手の方の国から発行された結婚証明書」の2点が原則として要求されます。つまり、片方の国だけで婚姻した場合はビザ申請ができないというのが原則となっています。
しかし、場合によっては、相手の国(外国)で婚姻が成立しない場合がありますし、その逆もあり得ます。
外国で婚姻が成立して日本では成立しない場合の典型例が、旦那さんの国で一夫多妻制が採用されている場合です。日本人配偶者が第1夫人であれば問題ないのですが、第2婦人以降となるとビザは下りません。というのは、日本では一夫多妻制が公序良俗に反するとされているからです。
日本では婚姻が成立するのに外国では成立しないケースというのもあります。例えば、カンボジアでは「外国人男性とカンボジア人女性が結婚する場合、男性は50歳以下かつ2500米ドル以上の月収があること」という要件があります。ちょっと気の毒な話ですが、50歳以上の外国人男性の方とカンボジア人女性のカップルは、カンボジアでは絶対に結婚できないということになります。
このような場合は、入管が要求する「お相手の方の国から発行された結婚証明書」はどう頑張っても取得できません。そのため、日本で婚姻を成立させ、相手方の国の結婚証明書については理由を説明した文書を添付して結婚ビザの申請を行います。ここでいう「理由を説明した文書」とは、個人で調査した結果ではなく、ある程度、公に認められた文書である必要があります。専門書の写しを添付するのが一般的です。
上記の認定証明書は2017年にご依頼頂いた案件で、福岡入管へ申請して交付されたものですが、ご主人がアルジェリア人男性の方で、婚姻は日本でのみ成立したケースです。アルジェリアの婚姻法では、女性はワリと呼ばれる証人2名と婚姻の意思表示をすることとされており、外国人が相手国の婚姻証明書を取得するのはかなり困難です。この案件の場合は、アルジェリア婚姻法の条文を和訳した文書を添付し、相手国で婚姻を成立させるのは非常に困難である旨を説明し、申請をしたところ、1ヶ月程で在留資格認定証明書が交付されました。
法律の原則の一つとして、「法は不能を強制しない」というものがあります。ですので、不可能なことは強要されないのはもちろんなのですが、ただ個人的な事情・体験を説明するだけではダメで、客観的な資料を提供しなければなりません。「一生懸命頑張ったのにダメでした」というのではなく、ダメだった理由を相手国の制度・法律に基づいて説明をする必要があるのです。